映画プリキュアオールスターズF

映画プリキュアオールスターズF
最高の映画であり、最高の映画でなかった。

近年のプリキュアを活躍させて、最期にはプリキュア全員が強大な敵と戦う、オールスターズ映画としての構成は最高だった。
数がもう多くなりすぎたプリキュアは、オールスターズ映画といえども、全員にフォーカスを当てることはできないし、全員の声優を呼ぶことも現実的でないだろう。
その中で作ることができる映画としては、最高の完成度だったのではないだろうか。
メインで活躍するプリキュアは16人程度、かつ4つのチームに分けて、キャラクターたちがごちゃごちゃにならないようにしつつ、各個のチームでそれぞれ絆を深めることができた。
作品の異なるプリキュアが、新たな関係性を作り出す、それがオールスターズ映画の醍醐味で、この作品はそれを達成できた。
その関係性の規模は、チーム分けもあり限定的だったが、それでも現代のプリキュアの人数からなし得るものとしてはかなり素晴らしいものだったと思う。
そうありながらも、最終的には全員を登場させて、古いプリキュアにもスポットライトを当てることができたのは本当に感動した。
原作の重要なシーンをちりばめて、知っている人には懐かしさと感動を与え、知らない人には彼女たちの絆を伝えることができた良い演出だった。

最高でなかったのは、誰も主人公にならなかったこと。
強いて言えば、プーカとプリムだろうか?
オールスターズ映画だから仕方がないとは言え、物語上、主人公と言える存在はなかった。
みんなの力で敵を倒し、最後に立っていたのは今回フォーカスが当たった16人。
現役プリキュアのスカイとプリズムが映る場面が多かったけど、物語上重要な存在だったわけではない。
それで、ひろプリ勢がかわいそうだな…と思った。
きっと、ひろプリ単独の映画は作られないだろう。
春映画はなくなり、年に1本の映画となっていくだろう。そこで何を拾い、何を捨てるか。
今回は、ひろプリの単独映画を捨てることになった。20周年という名目で。
理屈はわかっても、悲しい気持ちの方が大きいかなー。
まあ…レジェンド来られてもつらかったけど(ヒープリ映画の5GoGo、トロプリ映画のハトキャ)。

この映画単体として見ても、膨大な人数を活躍させる必要から、いろんなものを削って作り上げた作品だと思う。
たとえば、4チームが城に向かう理由は明確ではない。そこに見えるから行き、そこで集合できた。
また、プリムがなぜ生まれたか、なぜ強大な力を持ったかは示されない。仲間っぽい人と合流するけど仲間じゃなかった、という人だった。またその設定を合理的にするために、かつて戦って敗北しており、その記憶が失われている、という設定もある。
4チームそれぞれ関係性を深め合い、合流し、プリムが悪い存在だと明かされ、最初は16人で戦い、最終的には全プリキュアで戦い、プーカが覚醒し、プリムを撃破する。
4チーム集合からの流れが速すぎて置いて行かれそうになる。
プリムがプリキュアになろうとした理由もそれなりに用意されているものの、まあキュアシュプリームとして登場した伏線を回収する最低限の理由付けにしかならない。
結論、敵が敵として存在する理由が希薄だから、プリキュアたちが戦う理由も希薄になってしまっている。
それは、このボリュームの映画では描ききることは不可能だっただろう。現状の見せ方でも充分に頑張っていると思う。
それでも…よく分からないなと思ってしまう。
結局のところ、子ども向け映画としての見せ場は沢山ある。大きいお友達向けにも、過去プリキュアが登場して感動させてくれる。でも、物語の芯の部分はどうしても作り込めなかったなと感じる。
全然つまらないとかは思わないんだけど、いろいろと唐突だなと感じてしまうなぁ。

その他の感想。
ひろプリの変身曲を映画館で聴けるのは最高だったな。バスドラがすごい勢いで響くのが最高だった。
変身しながらオープニングのスタッフが表示されるのもエモくて良かった。
キュアミルキーこと羽衣ララ。スタプリからの抜擢を受けた、可愛くて大好きなキャラクターで、小原好美さんが演じる。ララは声が変わったねー。4年も経つと変わるよね。こちらも新鮮味をもって聞かせていただきました。当時はもっと、口腔の上の奥の方に空気を蓄えるように、また軽く鼻側にも息を流している印象で、くぐもった感じがありつつも鼻からの息がクリアに聞こえて、唯一無二のかわいらしさ、あどけなさ、舌足らずな感じが出ていてものすごく好きだった。
板岡さんの総作監。板岡さんの絵柄にはクセがある。それが拭い去れないところがあった。変身バンクといった緻密な絵を描くことにかけては最高の才能を持った方だと思う。けど、作画監督としては自信のクセが強く出てしまうのかなと思った。どの作品の絵でもなく、オールスターズ向けの中間的な絵柄でもなく、単に氏の絵柄が出てしまっているなぁ、というところはいくつか見受けられた。
深澤さんの劇伴。壮大で物語を盛り上げる上で最高の効果があったと思う。映画書き下ろし曲も沢山あったのかな?あと戦闘時に挿入歌が入るのは熱い演出だけど、色んな人が出てきていろいろしゃべらせたいところからすると、少々ノイズかも、とも思ってしまった。

という感じで、いろいろ書いちゃったけど、密度が濃いので何度見ても新たな発見があって、楽しめる映画だと思う。
自分は2回見たけど、次回があれば、こういう日記を書くためとか考えずにまっさらな心で、ララばっかり見ないで、楽しんで見ようと思う。
評価するなら…★★★★☆かな。
それではまた次の映画で!